革新の生命医学情報 No.14


各種器官の構造及び組織発生と血球分化②

【3】膵臓と血球分化

 (a) 膵臓についての概要

 ピンク色を帯びて如何にも新鮮な感じを与える臓器で、脊椎動物以上の動物がもっています。この臓器は頭部と体部、そして尾部から成り、頭部は十二指腸に接し、尾部は脾臓に達しています。組織の構造は耳下腺によく似ているためドイツでは『腹部の唾液腺』という意味の語で呼ばれています。 膵臓はタンパク質を分解するトリプシン、炭水化物を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼなどの酵素を含む膵液を十二指腸に分泌します。この他に膵には内分泌部分であるランゲルハンス氏島があってそのβ細胞と呼ばれるものから糖分代謝を調節して糖尿病を予防するホルモン、インスリンを血液中へ直接分泌しています。
 膵臓は魚類ももっていますが、ランゲルハンス氏島の部分は哺乳類と比較して占める率が大きくなっています。また飢餓状態では組織細胞は顆粒で充たされていますが、正常状態になるとその顆粒は排出されます。膵臓機能が阻害されたり、膵臓を摘出したりすると糖分代謝は当然に妨げられます。
 それはランゲルハンス氏島のβ細胞と関係があるといわれています。

 (b) 膵臓の組織発生

① 哺乳類……哺乳類においての膵臓は最初に十二指腸壁上皮の肝臓を生ずる部分の近くに2個の憩室として生じます。この膵臓の基は一つが背側膵、もう一つは腹側膵と呼ばれ、腹側膵の排泄管が後に膵臓の分泌管の一部になります。腹側膵は膵臓の大部分を占め、後には膵頭部の一部と体部、そして尾部を形成します。始め膵臓の原基は一つの層の細胞から成る管が吻合しあったものから形成され、後に小葉又は腺部とランゲルハンス氏島に分かれます。小葉中には特殊顆粒が現れますが人間の胎児では体長が31センチの頃に現れるといわれています。ランゲルハンス氏島が小葉から生ずるかどうかについては今も未解決のまま残されています。
② 両棲類……両棲類を含め膵臓の外部形態の発生は哺乳類の場合と等しいので説明は省略して、フリエの報告の概要を紹介し、千島学説からの説明を加えましょう。
  現在、既成学説として一般に承認されている見解は、膵臓の原基とされる管状組織は後に膵臓の内分泌組織及び外分泌組織を生ずるものだということです。しかし、多くの研究者は管状組織から膵小葉を生ずる過程について未だ明確にしていません。フリエがイモリを材料として調べたところ、『原始膵小管は生育した膵原基から生じ、それが成長して膵の小葉に分化するが、一部の小管はこれとは別に2次的な小葉基部の細胞増殖によって形成される。そしてランゲルハンス氏島の組織は充実した膵原基からと、一部は原始膵小管の細胞の両方から生ずると考えられるものが多いとアローンやハードはいっているが、自分の観察ではランゲルハンス氏島は膵の背側にのみ現れ、小葉の中心にある細胞の移動と増殖によって増大し、変態期前にもう成熟しインスリンを検出できた』と報告しています。  彼は細胞の移動を考慮しているところはよいとしても、細胞増殖は認めていますが細胞分裂像は殆ど観察できなかったと、報告に添えられている写真に記されています。細胞分裂をすることもなく細胞が増殖したという観察のなかで、どのように増殖したかについて大きな疑問を提示してくれれば、より効果ある実験になったことでしょう。ランゲルハンス氏島の起源は赤血球であるということが理解できれば、不一致な諸説や矛盾は一気に氷解するに違いありません。




図1

…オタマジャクシの脾臓…
外分泌腺(b)とランゲルハンス氏島形成部の(a)を示す。(a)から(b)への移行像が認められる。(千島原図)



図2

上の図をより拡大したもの…
膵腺細胞(b)とランゲルハンス氏島(a)の間には厳密な境界はない。(a)部には赤血球から分化した幼いランゲルハンス氏島細胞の集合がある。


【4】ランゲルハンス氏島の組織発生と血球分化

  ランゲルハンス氏島細胞

 従来の実験では色素中性赤又はヤーヌス青を動脈に注入すると、膵臓のランゲルハンス氏島が非常に強く染色されることがわかっています。このことは当該細胞と血球とが直接の関連をもっている証明であり、また千島学説・第1原理の正当性を裏付けることにもなります。これまでランゲルハンス氏島の形成と血管及び血球とが直接の関連にあることを見落としているのは、赤血球や血管を固定的な観念で捉えているからでしょう。
 ランゲルハンス氏島細胞には従来、アルファ、ベータ、デルタの3種の細胞に分類されています。
 アルファ細胞は最も大きく、全細胞質中に粗大な分泌顆粒を含んでいます。このアルファ細胞も分化の段階によって顆粒の染色性や核の構造に差異があります。ベータ細胞は前者に次いで大きく、数は前者よりも多いとされ、ベータ細胞の顆粒は成長とともに数を増していきます。デルタ細胞は最も小さく数も少ないものの、細胞質中の顆粒はベータ細胞のものより僅かに大きいとされています。
 上述したようなことが哺乳類成体のランゲルハンス氏島についての既成組織学の常識ですが、このなかでは次の重要な3点が明らかにされていません。
① ランゲルハンス氏島の細胞集団のうち多くのものは小細胞との間に境があるように見えますが、注意深く膵臓組織の各部分を観察すると周囲との境界がはっきりしない部分がかなりあります。
  『赤血球分化説』から考察しますとランゲルハンス氏島の細胞も周囲の小葉細胞も赤血球の分化によって生じたものですが、この組織の細胞は膵腺小葉の細胞より分化速度が遅いものです。ランゲルハンス氏島細胞が小葉細胞より小さく、顆粒も小さく少ないことはそれを示しています。そしてこの組織の細胞は後に小葉細胞に分化することは間違いない事実です。現在なおこれらの細胞を別個の無関係な細胞と考えていることは検討しなおす必要があります。
② ランゲルハンス氏島にあるアルファ、ベータ、デルタという3種の細胞はそれぞれ別種の細胞と考えられています。これも千島学説の新理論からその形成過程を捉えますと、赤血球塊→血球モネラ→内部に核出現→顆粒の少ないデルタ細胞→ベータ細胞→小葉細胞様細胞塊の過程を経てランゲルハンス氏島細胞が膵腺小葉細胞へと移行する像が確認できます。アルファ細胞は主にランゲルハンス氏島の周辺に位置しており、注意深く観察すればその外縁部から膵腺小葉細胞へ移行している像を誰でも確認できることでしょう。
  アルファ、ベータ、デルタの3種の細胞は各々独立した細胞ではなく、デルタ→ベータ→アルファへの分化移行過程があり、詳しく且つ注意して観察すれば、各々の分化過程の中間像として、3種の細胞の何れにも属さない形のものを確認できるはずです。
③ ランゲルハンス氏島細胞群には3種の細胞の他に、必ず赤血球と白血球又はそれらの退行像(溶解しモネラ状になったもの)が確認できます。それはランゲルハンス氏島細胞を新生する母体です。
  千島喜久男は次のようにいっています。『研究者は完全に出来上がったものだけに視点を当てることなく、形成の初期から成熟まで途中の経過を含めた総合的な観点から観察する必要がある。率直に注意深く観察すれば、これまで見過ごしたり、また気づいても学界からの圧力を怖れ放置していた研究者でも私のいうランゲルハンス氏島細胞の血球起源説が事実とよく一致していることを改めて確認することができるだろう。』


<<< 目次に戻る   >>> 次