新生命医学会

千島学説|新生命医学会

トップ > 革新の生命医学情報

革新の生命医学情報 No.2

生命弁証法……『千島学説』の基盤となる科学的方法論

彷徨える現代医学

『現代医学は強力なエンジンと立派な近代的設備をもつ魅力的な大艦隊に比すべきものである。しかし、その艦隊は羅針盤をもたず、方向舵も極めて貧弱なものである』……(ロックフェラー大学医学部教授 ルネ・デュボス)
『世の中で何がいちばん難しいことか・・・? それはもっともたやすいことに見えること、即ち眼の前にあることを眼(心眼)で観ることである』……(ゲーテ)

 現代医学は驚異的な発展を遂げたかのように考えられています。しかし、その発展は機器や技術の面という外見だけといわざるを得ません。前世紀的、且つ誤った定説を基盤とした現代医学は、ガンを始めとする難病・奇病、またその他の諸疾患に対しても、暗中摸索の治療に終始し、確固たる治療策を持てない状態が相変わらず続いています。まさに、ルネ・デュボス教授の言葉にあるように、整えられているのは外観だけで、内容については、一刻も早く改められるべきことばかりです。
 物理科学は宇宙時代、生命科学は原始時代・・・この実態は実に嘆かわしいことです。医学の混迷が続く今こそ、誤った考え方の転換をしなければなりません。
 医学・生物学の「定説」において、

何処が誤っているのか。
どうして、そんな誤りが起きたのか。
どのように是正されるべきか。

 それを人々の健康、健康自衛、治療策として如何に応用するか。
 その道標となるのが、これからお話する革新医学理論『千島学説』です。

『千島学説』の特質

 権威に屈することなく、事実を謙虚に観察した発見である。
 ものの観方、考え方に「広く、永い目でものごとを観る」という一つの哲学的見地から、自然界の現象を長期的・連続的に注意深く観察したごく自然の発見である。
 学説構成の基盤は「唯物弁証法」と「唯心弁証法」を止揚統一し樹立した心身一如の「生命弁証法」にある。
 すなわち、A、B、Cという3つのものを観たとき、その各々を部分的、分析的に観ることなく、A→Cへの関連性の有無を注意深く、より自然の状態で長期的に観察した自然界の事象そのものの事実が『千島学説』です。自然界における生命現象そのものが『千島学説』の各理論です。
 『千島学説』の骨格となっている「生命弁証法」は8大原理の最終原理・第8原理ですが、第1原理の「赤血球分化説」においても重要な関連がありますので、その概略をここでお話ししておきます。具体的なことは、改めてこの原理のところでご説明しましょう。

『千島学説』の基盤となる生命弁証法と従来の科学方法論である形式論理との考え方の比較

生命弁証法 形式論理
凡ての事象は時と所の変化に応じて絶えず流転、変化する。(万物流転) 固定的・静的・峻別的に考える。
AはAでありBたりえない
広く永い目でものごとの全体を観て判断をくだす。 部分に捉われ、近視眼的、また早急に判断をくだす。
凡ての事物は矛盾対立を内包し、その対立抗争が進歩や変化の原動力となる。 生命弁証法的観方を否定又は無視する。
限界領域を重要視する。
形式論理の排中律的考えを排除し、限界領域にある漠然とした移行途中型を重視する。そして生命と自然・環境との連続性、事象の連続性を重視する。
明確を尊び、事物をはっきりと峻別し、AからBへの漠然とした中間移行型の存在を原則として認めようとしない。
生命現象の可逆性(繰り返しめ原理)
自然、ことに生命現象は繰り返しを原則とする。
熱力学第2法則(エントロピー増大の法則)を遵守し、時間の逆戻り、事象の繰り返しを原則として認めない。
量の蓄積によって質的転換が起きる。 これを認めようとしない。
AFD過程を重視。
生命や自然の生成・発展・進化は、集合(Aggregation)、融合(Fusion)、分化発展(Differentiation)の過程をたどる。逆AFD過程は退化・衰退・死ヘの過程である。
AFD過程の存在を認めない。
共生(相互扶助・共存共栄)は進化発展の大原則である。 進化の主要因を弱肉強食主義において考えている。
唯物弁証法と唯心弁証法を止揚統一した心身一如の生命弁証法の必要性。 唯物形式論理を重視している。
生命現象の波動・螺旋性を重視する。
生命は肉体と精神の調和、自然は物質とエネルギーの不可分な一体であり、そして自然も生命も絶えず波動(リズム)と螺旋運動的な変化を周期的に繰り返している。
生命現象の波動・螺旋性に無関心。

 このように現代の自然科学者たちは、自然の事象を静的かつ分析的に考え、さらに物理学の法則をそのまま生命体に適用しています。生命現象という流転を続ける対象に対する機械論的思考が現代医学・生物学の重大な誤りを召致した大きな要因といわざるを得ません。

生命弁証法の10ケ条

① 万物流転

 ギリシャの哲人、ヘラクレイトスは『Panta rhei』…パンタ レイ…という言葉を残しています。『凡て、流れる』という意味、すなわち『同じ川の流れには二度とつかることはできない』ということです。
万物に不変という事物はありません。どんな物でも何百万年、何千万年、何億年という時の経過によって何らかの変化が現れるはずです。ラジウムは二千年で鉛に変わります。不変とされる金や銀でも長年月を経過しても不変だという保証はありません。
 今の医学は赤血球、白血球、体細胞、ガン細胞等は各々別に発生するもので関連性は全くないとされています。これは大変な誤りです。白血球、体細胞、ガン細胞、炎症組織の細胞など、どれも時間の経過、体内環境の変化によって、赤血球から変化したものです。赤血球が変身したものに他なりません。

② 広く永い目で物事を観る

 生命現象や自然現象の観察において、正しい判断をくだす場合、眼前のものにおける空間的、時間的変遷を考慮することなく短絡的な誤った判断をくだすことがあまりにも多いものです。空間という広大な広がり、時間という連続した流れを考慮し、部分に捉われず全体を総合的に観ることによって、正しい判断をくだすことができるのです。

③ 矛盾対立とその統一

 生物を含めて自然界のあらゆる事物は相対立し矛盾する傾向をもっています。そしてその対立矛盾の存在があってこそ調和がとれ、それが発展あるいは衰退への原動力となります。たとえば原子の中心核であるプロトンはプラスの電荷を帯び、その外側にはマイナスの電荷を帯びたエレクトロンという電子が猛烈な速さで回転し、相対立しながら調和を保っています。細胞も酸性である細胞核を微アルカリ性の細胞質が覆っており、この対立した存在が調和の原動力になっています。

④ 限界領域の重要性

 事物の連続性を重視する必要があります。AはあくまでもAではなく、時間の経過とともに漠然とした中間移行型を経てBに変わり、さらにAでもBでもない中間移行型を経過してCに変わります。連続して次段階に移るのです。
 現代の自然科学者たちは一般的傾向として明確を尊び、不明瞭な漠然としたものは無視又は除外します。しかし、事象変化の主体は、この漠然とした中間過程に隠されているのです。この部分を無視し続けている限り、現代医学・生物学の誤りを是正することはできません。
 限界領域にある過程は、注意深く観察することで誰でも観ることが可能なものです。『千島学説』の各発見は、この限界領域における事象を注意深く観察した結果生まれたものです。

⑤ 可逆性、繰り返しの原理

 現代の科学は物理学の大法則とされる「熱力学第2法則(エントロピー増大の法則)」を遵守し「ものごとには可逆性はない」ことを原則としています。エントロピー増大の法則とは「熱は時間の経過とともに高所より低所へ流れ、ついには平均化する」というもので「時の矢は一方的に進行し逆戻りすることはない」ということになります。事象の逆戻りを否定したこの法則は日常的なことには該当しているようですが、万象に絶対的なものではなく、確率的なものであり、稀には逆行もあることが肯定されています。そのうえこの法則は、宇宙が閉鎖性、すなわちエネルギーの出入りがない隔絶した世界で起きることだとされています。
 しかし、宇宙は無限の世界であり、隔絶された世界とは無縁であるごとは周知の事実です。この現実離れした物理学の法則を、自然界に、いわんや生命現象にまで適用したことは、道理にかなったことではありません。ことに生命体には逆戻りの現象は多々あります。下図はクラゲの逆成長を示したものですが、人間でも節食や断食をしたとき、体細胞や脂肪が赤血球に逆戻りして、体重減少と同時に体細胞が全身的に若返ります。これは逆成長であって、生物的な時間の逆戻りがあることを示唆しています。

クラゲの逆成長(若返り)……栄養状態による逆戻り

海水中に食物をなくして絶食状態にしておくと、クラゲは触手や体が次第に吸収され退化し、最後には発生初期の胚子のような細胞の塊に逆戻りする。即ち逆成長(若返り)である。エントロピー増大法則とは逆の方向である。そこで食物を与えると、今度は普通の成長をして元の生体に戻る。この間、生体にとっては時間は逆行するかのようである。これを生物的な時間の逆行という。

⑥ 量から質への転換

 生命体の生成発展過程は通常、集合→融合→分化発展という過程をたどります。すなわち同一の質をもつものが集合し、これが溶け合ってまったく異質のものに変化することをいいます。

 有機物→融合→バクテリア・細胞を新生
 細 胞→融合→各種組織・器官・生物個体

 このように下次の段階にはなかった新しい形質、たとえば細胞や各種組織、器官から高度に分化した脳や神経組織をもつ人間ヘと発展します。これは部分の結合という結果によって、新たな形質が現れるわけです。
 このような発達した生命体の特性は、分析によって知ることはできません。生命体全体を総合的に観てこそ知ることができるのです。「全体性」こそ生物の特性なのです。

バクテリア集団から原生動物(ゾウリムシ)の自然発生を示す
有機物を含む水の表面に生じた細菌の膜(菌膜)を静かにそのままカバーグラスに採り、固定したギームザ氏液で染色したもの。
細菌(一種の腐敗菌)の集団から細胞構造を形成し始めている。

⑦ AFD現象

 生命体の発生発展過程である⑥の「量から質への転換」を示す一つの図式です。

A・・・集合 Aggregation
F・・・融合 Fusion
D・・・分化発展 Differentiation

 の各頭文学をとったもので、千島喜久男の造語です。説明は前項と重複するため省略しますが、AFD現象は生命発展の根本原理であることをご理解下さい。


ゾウリムシのバクテリア集団(左)からの後期・初期及び成長したゾウリムシ(右)は分裂することもある。

⑧ 共生(共存共栄)

 シロアリの腸内には無数のバクテリアやトリコニンファと呼ばれる原生動物が共生しています。これは木材を食するシロアリの栄養吸収に不可欠な働きをする共生生物です。シロアリに限らず人間やその他の高等動物でも、腸内にいるずっと下等な細菌と共生しないと生存できないことは周知のことです。
 下痢治療薬のキノホルム、抗ガン剤として使用される種々の抗生物質等は腸内有用細菌をことごとく殺してしまいます。結果として正常な腸機能が阻害され、造血箇所たる絨毛も破壊され、最終的には栄養障害と極度の貧血によって致命的なダメージを受けることになります。
 人間のほか高等動物といわれる動物が、最下等の腸内細菌と共生している事実から、人間はまた他の植物や動物とも共生していかねば生存は困難になります。人類の発展も人類相互の助け合いがあってこそ実現することです。
“戦争は文明発展の母である”とか、“戦争は闘争本能をもつ人間に課せられた宿命である”といったパカげた思想は捨てなければなりません。

⑨ 心身一如の生命弁証法

 弁証法はへーゲルの唯心弁証法と、マルクスが説く唯物弁証法との対立があります。前者は精神を存在の第一義とし、後者は物質を凡ての基礎とした考えです。
 現代の科学者たちは唯物論を主体としていますが、今この唯物論的思想は行き詰まりに直面しています。こと医学において、この傾向が強く見られようです。薬剤とメス一辺倒の現代西洋医学が、ガンを始めとする難病奇病、その他の諸疾患に対し決定打を欠き、暗中摸索の対症療法に終始している現況も、部分を見て全体を観ない哲学の貧困が最大の原因といわざるを得ません。
 いまこそ、ものごとの部分に捉われることなく、全体かつ総体的に観る心身一如の生命弁証法に判断の基準をおくべき転換期にあるといえます。

⑩ 生命現象の波動・螺旋性

 自然は極微の世界(素粒子や原子の世界)から極大の世界である大宇宙、ラセン状星雲に至るまで、スパイラル運動が共通のパターンとなっています。これは自然の動きも生命の流れも広く永い目で観るとき、僅かな歪みを有するためです。この僅かな歪み(左右不相称性)が運動形態にスパイラルを生じることになります。この万象のスパイラル運動は時間、空間にも歪んだ左右不相称があるため生じるわけですが、詳しくは第8原理のところでお話ししましょう。

 さて『千島学説』の基盤を構成する哲学的科学方法論「生命弁証法」の概略をご説明しました。この生命弁証法は前に述べましたように、第1原理「赤血球分化説」から第7原理「進化論の盲点」に至るまで、各原理をご理解いただくための重要なキーポイントになる理論です。「生命弁証法の10ケ条」を参照され、『千島学説』8大原理の各論編に入っていただきたいと思います。

<<< 目次に戻る    >>> 次

ページのトップへ戻る