8.ガンの予防・治療とその対策
中世紀、外国では断食や減食によって腫瘍やその他の病気を治療する方法が行われていました。日本でも断食療法は古来より行われており、現在でも多くの断食道場が存在し慢性諸疾患の治療がなされていることはご承知のとおりです。
食物の種類や量を一定に制限することは、ガンその他の慢性疾患の予防、治療に卓越した効果を示しでいることは否定できない事実になっています。しかし、現代医学は断食、あるいは減食といった東洋医学療法に全くといってよいほど関心を示していません。ことにガンその他の腫瘍は正常組織と比較すると断食や減食に対じて大変敏感な反応を示す事実は、腫瘍の物質代謝が非常に旺盛であることからも説明することができますし、千島学説の『第2原理・組織の可逆的分化説』によって、必然的にガンの発生とその消長が栄養状態と密接な関連にあることが証明されています。
a.動物におけるガンの発生と栄養
動物の摂取カロリー量とガン発生率との関係についてはMoreschiの研究があります。彼の研究は減食によって体重が減ったマウスは、食物を十分に与えたマウスと比較してガン発生率が低かったというものです。この結果は他の研究者によっても実証されています。 Hasting によれば、長期にわたって減食を続けたガン発生系統のマウスには乳ガンが全個体の16%にしか発生しなかったのに対し、十分な飼料を与えたマウスでは88%の個体に乳ガンの発生を確認したと報告しています。
このように食物摂取量を減ずれば発ガン率は低下することは事実として証明されています。また一方で減食量が非常に軽度であったり、中等度の減食では効果が薄いという報告もされています。 Longたちは長期のわたって食物量を2/3に減じなければ発ガン率の大幅な低下を期待することはできないといい、Morrsは動物の正常な発育を妨げるほどの減食をしなければ効果は薄いといっています。
絶食、減食のガン発生率低下作用は、体のすべての組織から不用な過剰物質や有害物質を自動的に除去することと、すべての過剰あるいは病的組織を赤血球に逆分化させ、組織又体内全体を浄化し発ガンを抑止、あるいはガン組織を縮小又は消失させることに大きな効力となることはいうまでもありません。
b.動物における腫瘍の成長、再発と減食
Moreschiの報告では、減食マウスの肉腫の成長速度は飽食マウスのそれより著しく遅いといい、その理由についてRousは腫瘍内の血管成長が抑圧されるから、腫瘍の発育もそれにつれて遅くなるのだと説明しています。
これは正しい考察だといえます。減食によって固定組織が赤血球へ逆分化を起こすのは消化管において赤血球造血が著しく低下するためです。
またRousは手術前に減食したものは再発が少ないが、手術後に減食したものは再発防止にまったく役立たないといっています。せっかく意義ある実験をしていながら、片手落ちの結果を出していてはなんにもなりません。手術後でも減食は大いに効果を示していることを完全に見落としています。白血病マウスの実験についてFloryは飼料を半減あるいは1/3に減じたものは十分な飼料を与えたものより長生きするといっています。゛
要するにガンを始め腫瘍や白血病の動物に対して、かなり強度の減食をさせると、その発生や再発また進行を抑制することは確かな事実です。
c.食物の量と質と人間の発ガン
多くの学者の研究によって、肥満した人はガンになりやすいとされでいます。45才以上のアメリカ人192,000人を対象とした統計によりますと、平均体重より5~14%重い人のガン死亡率は平均体重の人より9%多く、また15~24%重い人は24%、25%以上重い人は29%も多くなるとされています。
この統計の示すところでは、著しく肥満した人は痩せた人よりガン死亡率が高いことは確かです。肥満者は食物摂取量が多いことも考えられ、また同じ食物でもその消化、吸収能力が高いこともあり得ることです。
何れにしても飢餓や減食とは反対に、過剰の栄養分か脂肪を蓄積させ、またガンを発生あるいは成長させることになることは事実です。食物の摂取量を制限し、著しい肥満を避けることが、ガンの予防、治療に必要不可欠なことは前述したとおりです。
(1) ガンの断食療法
① 断食の定義
戦争や飢饉、その他偶発的な外界条件のために食料不足でやむをえず絶食や減食をすることは他動的なもので、治療でいう断食とはなりません。「断食」は自発的に絶食をすることで、他動的な戦争や飢饉によるものとは動機がまったく異なっています。自発的な行動という動機の点で、断食はその実行中において精神の安定が保たれ、そのうえ全身に対する優れた影響を期待できます。
② 断食の歴史
ハンガーストライキやインドのガンジーがよくやった断食抗議などは、おりおり耳にすることてすが、断食のもっとも古い歴史は何といっても、宗教的な行事や精神生活に始まったものでしょう。英語では断食をFastingといいますが、この語には断食という意味の他に“精進”という意味があることからも、精神生活と密接な関連のあることが分かります。
難行苦行の一形式として一定の期間、食を断つことは心身が浄化され、神仏との霊的交流が行われやすくなり、且つ神仏の加護が与えられるという信仰に始まったようです。
このようなことから、断食の起こりは東洋であったことは、仏教やキリスト教、インドのヨガや回教、中国の道教など何れも断食を重要な行事としていたことからも推測できます。釈迦やキリストも断食をしたことが書物に記述され、またユダヤの人たちは断食によって懺悔し、戒律を守ったことが旧約聖書に見ることができます。一方、西洋においては、断食療法が始まったのは1821年頃と比較的浅いようです。
③ 日本の断食療法
日本の断食もインド思想や中国の仏教、道教、儒教などの文化の影響を受けて、古くから宗教的な色彩が濃いものでした。しかし、明治時代以降になってからは、断食を病気治療、体質改善、長生きなどの目的で行われるようになりました。
この断食については多くの研究や著書があります。主な研究者の名を挙げますと村井玄斎、高比良英雄、西勝造、塚越哲哉、小島ハ郎、の諸氏です。外国でもKeys、その他多数の研究者があり、断食の適応症として消化器病、心臓疾患、糖尿病、高血圧、喘息、神経痛、肝臓疾患、結核、肋膜炎、その他多くの慢性疾患の治療に有効であると報告しています。しかし、ガンに対しても有効だという報告は比較的少なく全報告者15名中5名だけでした。これは多分、ガンと血液、そして赤血球との関係がよく分かっていないためだと考えられます。
(2) 断食や減食がなぜガンの予防・治療に有効なのか
① 赤血球とガン細胞が可逆的関係にあること
ガン細胞は赤血球(一部は白血球)から分化したものであることは前述したとおりです。また一方、千島は岐阜大学・農学部教授時代、生物学教室の人たち(松井、村田、酒井、万部、鵜飼、岡部の6氏)と共にカエル、ニワトリ、ウサギ、ラットなどを使い、飢餓による組織の変化について1953年以降研究をしました。
この研究の結果、飢餓動物は脂肪、筋肉を始め各種臓器や組織の細胞が赤血球に逆分化する事実を見出しました。これを研究グループは『血球と固定組織細胞との栄養の変化による可逆的分化関係』と呼ぶことにしました。
第2原理『血球と組織の可逆的分化説』の根拠となった研究です。この原理について、千島はガン患者に直接実験したことはありませんが、私が、自分の右肩にある脂肪腫への断食効果を見るため、自宅において30日間の本断食(減食10日、断食10日、復食10日)を行ったことがあります。その結果、体重は6.7Kg減少し、肩の脂肪腫(長さ4センチ、幅2.5センチ)が減食7日目あたりから縮小に気づき、復食3日目には完全に消滅していました。約2週間でかなりの大きさがあった脂肪腫が断食で消滅したのです。
これが体内のガン腫だったとしても、同様の経過が見られたものと確信します。断食によるガン治療への特効は、奈良・信責山断食道場、別府市・健康クラブ、大阪・甲田医院、また加藤清氏によるミルク断食療法などで証明されています。
種々の慢性疾患のなかで、断食による効果がもっとも早く境れるのが、ガンである…! これは現代医学界では無視していますが、医師の多くの人たちが、断食道場で自分のガン治療を受けている事実からも、断食の効果を知ることができます。
② ガンや白血病は消化器障害と密接に関連する
千島及び松井、中閑の両氏は白血病になったニワトリの腸粘膜を観察した結果、著しく粘膜が破壊されていて、消化・吸収が非常に困難な状態になっていることを確認しました。ガン、また血液ガンとされる白血病、その他の結核、感冒、肝疾患、等の大多数の病気は消化器と密接な関連をもっています。
断食や減食がこれらの病気に著効を示すのは、消化器を休養させ、胃腸内の腐敗を抑制し、消化管内巻浄化するために毒素の発生が防止されるからです。
そして、最も大きな効果は断食による組織浄化のためです。抑留毒物は排除され、ガン腫、炎症部の細胞、蓄積脂肪等が不足血液補充のため、新鮮な赤血球へ逆戻りさせることにあることを挙げねばなりません。
断食は体内にあるガン腫や脂肪等の余剰組織を最優先として赤血球に逆戻りさせるのです。この指令は体の自動制御センターである間脳が司どっています。
③ 血液組成を正常化する
血液組成の病的変化はガンを始めとするすべての病気と相関関係にあります。これは食物の質や量と病気が深い関係にあり、運動不足や精神の不安定などからくる血液循環の阻害、また病巣や消化管で生じた細菌毒素による影響も血液組成に病的な変化を与える要因になります。
断食や減食はこのような要因を体の内部から除外するために、全身の大掃除と血液の浄化に役立つ方策です。断食中、あるいは断食後の人において血色が良くなり、肌もツヤツヤとしてくるのは、血液組成の改善、細胞の若返りがあった証拠ということができます。
④ 消化器の負担を軽くじ睡眠不足を防ぐ
睡眠不足という状態が、体のすべての生理的活動を大きく阻害することは、よく知られている事実です。大食、過食、精神的苦痛などはどれも睡眠を妨げる大きな要因ですが、断食や減食はその害を軽減させます。
現在の医療はガン患者の衰弱防止のために、つとめて高カロリーの食品を与えるようにしています。患者は食欲もないのに医師たちに云われるまま、無理に食事をロにしようとしています。食欲がないことは、消化器を休ませて…という体の無言の要求です。それを無視して無理に食事をすることは自然の法則に反することです。それに気づかず、無理に食べることは、いっそう消化器系を傷めることになり、ガン腫をさらに大きくするという逆効果になることはいうまでもありません。
食事を減ずることは、如何なるものより大切な病気治療法なのです。
9.ガンの発生や治療は精神状態に左右される
ガンの発生は精神の不安定状態(大脳及び自律神経の不調和)と深い関係があることは否定できない事実です。最近では一部西洋医学者の間でも認めるようになっています。
これは混迷するガン対策のなかで、微かな福音といえるかもしれません。
深い関係をもつという理由が何処にあるかといいますと、次のような考えです。
心配、悩み、その他精神的抑圧がありますと、次第に呼吸が浅くなります。その結果として当然に酸素の循環量が減少します。血液中(殊に赤血球)の酸素含有量が少なくなれば、組織中の炭酸ガスが増加します。この状態がガンを発生させ、そして悪化させる重要な原因となっていることを医師も一般の人たちも余り気づいていません。これは千島の想像説ではなく、一部の科学者によっても実証されていることです。
BieseleやGoldblatt等は正常な組織の細胞を酸素が少なく、炭酸ガスが多い環境のなかで培養すると、ガン細胞や腫瘍細胞が発生しやすいこと、またガン細胞は炭酸ガスの多い酸素が少ない所でも強い抵抗力をもつことを確認しています。
このような所、あるいは無酸素状態の所にガン細胞が新生することは間違いのない事実です。精神的負担が長期に亘って継続していますと、前述したように呼吸が浅くなり、呼吸酵素(ATP)の供給が弱まり血流が停滞すると、そこに炭酸ガスが多く溜ります。そのような箇所に赤血球が集中しますと、その環境に適応してそれがガン細胞に変化する可能性が高くなります。
このため、ガンの予防や治療には先ず何よりも、精神的な負担を軽減する方策を考え、その実践に努めることと、適宜の運動や折りをみて1日に幾度となく深呼吸をする習慣をつける、日常の精神面を主体とした生活改善をしなければなりません。
ガンは不治の病だと盲信するだけで、その人は死に至る危険が非常に高まります。必ず治るという強い信念が、精神面で多大の力となるものです。自分の力で歩行する力があり、制ガン剤の投与を受けていない、あるいは少ししか投与されていない人でしたら、断食療法で短期間に治癒することは間違いのない事実です。その人の決心は必要ですが、著効を示す療法があることを知っておいて頂きたいと考えます。そのことを思うだけでも大きな精神力の糧になることでしょう。
10.ガン細胞の転移像を確認した人間は一人としていない
現代医学でぱガン細胞は転移する”ということが定義になっています。“増殖したガン細胞はその場所にガン巣を構成するだけではなく、血管あるいはリンパ管を経て全身に転移する”。
この「転移」という語を考案した人間は誰であるか私は知りませんが、ガン細胞の「突然変異」説と同様にまったくのナンセンスといわざるを得ません。
ガンが全身に広がる理由が理解できない、また説明できないために考案された、こじつけ説というのが適当でしょう。ガン細胞が血管、あるいはリンパ管を経由する像を確認できた人間は世界に一人としていない事実が、この「転移」なる現象がないことを証明しています。
現代の医学者も多くが“ガン細胞の転移”に疑問をもっています。
医学者自身が疑問を抱く理由は次のような事実です。
① 毛細血管の先端は閉鎖系とされている。血管内への侵入は不可能。
② 開放部があっても、ガン細胞の殆どが、毛細血管の口径よりも大きい。
③ リンパ管は血管中に開口するという定義から直接にガン細胞がリンパ管内に侵入することは困難である。また血管同様口径が狭い。
④ 「転移」像を確認した人間が誰もいない。
といったことです。
「転移」ということに疑問をもつことは、大変な進歩といえますが、いまなお患者には堂々と転移説でもって説明しているのは残念というほかありません。
“医学界”という無風を好む社会から、追放されることを懸念する医学者たちの心理を考えるとき、疑問を公にし真実を知ろうとすることは、多大の困難があることは理解できます。しかし、公にしなくとも、事実を確かめることは何時でもできることです。真の姿を追求する、学者魂はいつももっていてほしいものです。
さて、本論へ戻ることにしましょう。
“がん細胞の転移”は空想の世界に他なりません。ガン巣が同時、あるいは時間的な差をおいて体内に発生する原因について、苦しまぎれに考えついた屁理屈です。このような“学説”などとは程遠いまやかし語を医学者たちは盲信しています。誤りに気づくのは何時のことでしょうか。実に情けないことです。
ガン細胞は転移するのではなく「新生」しているのです。ガン細胞は局所だけに発生するのではありません。環境が悪化した組織に、他の箇所と同時に、あるいは時間差をおいて発生します。ガン細胞が発生しやすい環境は、局所的ではなく全身的に生じるのです。荒れた畑が改良されない限り、悪い芽が次々と現れることはいうまでもないこと。体内も一つの畑・・・荒れた組織の各所では、赤血球を母体としたガン細胞が次々と新生しガン腫を生成してゆきます。
この事実を知らない医学者たちは、各所になぜガン腫が現れるのか、その説明に窮したあげく、“ガン細胞の転移”という苦肉の語をでっちあげたのでしょう。ガン細胞の起源すら解明できていない現実では、各所にガン腫が同時、あるいは次々に現れる現象について『千島学説』を無視する医学者たちに説明できるはずがありません。それにつけても、この語を“発明”した人は、医学者というより文学者のほうが適しているのではないでしょうか。
11.ガン特集の要結
“ガン”と診断されることは今日の医学では殆ど死の宣告と同義語のようになっています。今なら回復する可能性があると、早期の治療を受けた入たちでも、長く苦しい入院生活のあげく、この世を去ってゆく患者は少なくありません。患者の悲惨さはいうに及ばず残された家族や周囲の入たちの癒すことのできない、深い心の傷は、一生消えることがありません。
現代医学は驚異的な進歩を遂げているといわれる一方で、ガン患者の死亡率が高まり続けている現状はどういうことなのでしょうか。
これは、いままでに述べたように、現代医学の根本に幾つもの重大な誤りがあることを今なお気づいていないからです。
その重大な誤りを改めて記述しておきましょう。
① ガン細胞に対する誤った既成学説“細胞分裂説”を盲信していること。
② 赤血球の重要な働きを完全に見落とし、あるいは無視していること。
③ 発ガンの要因に長期のストレス蓄積があることを軽視していること。
④ ガン患者、及び慢性諸病の患者に衰弱防止策として、高カロリー食一辺倒の栄養学に終始していること。
Wellsはその著のなかで『ガンは将来、病院や研究室で、恐怖に震えながら、しかも冷静に、急がず、あわてず、根気強く研究する人々によって撲滅できるときが来るであろう。ガンに打ち勝つ動機となるものは、苦痛でも、名誉でもなく、ガンは何故に、どのように起きるかを知ろうとする好奇心である』といっています。彼のように、ガンヘの恐怖を克服せんがために、多くの研究者たちがガン対策への関心を強めていますが、現状はWellsのいうような好奇心などでは、根本から誤っている現代医学む基盤を正すことなどできません。
真剣にガン克服を望むなら、研究者たちは既成学説に捉われることなく、前述したような『千島学説』の新血液理論によるガン細胞の起源、また精神生活とガンの密接な関連、ガンや慢性諸病治療にはマイナスの栄養学、すなわち断食・減食が不可欠な方法であることなどを率直に受け入れ、感情を捨て人々を救う熱意を燃えることこそ、ガン対策に係わる人たちが今すぐとるべき道なのです。 `
ガンは人類が自然の摂理に反した生活をした結果、荒れた身体に生まれた我が子が病気になったと同じこと。体内環境を是正し浄化することによって、病気だった我が子のガン細胞も、間もなく健康な赤血球に変わり、そして正常な体細胞に変わってゆきます。